ボルトエンジニア

工学講座 ボルト・ナット締結の知識

質問5

ナットを締結した時、どうしてねじ山を3山以上出す方が良いのか?

回答

[1] 製造面からの理由

「一般に」ボルトにねじ部を加工形成する場合、加工工具の面取り部分や食い付き部分によって、どうしてもボルトの端部に、ねじ山の形が不完全なねじ部ができてしまいます。この不完全ねじ部の長さは端面の面取り部分を含めて約2山になります。ナットで締結する場合、この不完全ねじ部に掛からないように安全をみて、3山を出して締結することが推奨されています。 ですから、一般に面一(つらいち)は避けた方がよいでしょう。


[2] 力学的な理由

ナット頂面からねじ山が出ている場合と、面一の場合とでは力学的に異なります。
【1】 ねじ山が出ている場合:
質問No.2の回答のグラフにある通り、ボルトを締結した時のナットの各ねじ山は、ボルトの張力を均等には引き受けません。第一ねじ山(座面直近部)で引き受け荷重(荷重分担率)が最大となり、ナット頂面に近づくに従い減少しますが、最後のねじ山(頂面に一番近いねじ山)で、※「再度上昇」します。

【2】 面一の場合:
この場合、※「再度上昇」が無くなり、荷重分担率は単調減少をします。
このように【1】と【2】で違うのは、ねじ山が出ていると、頂面から飛び出したボルトのねじ山部が、ナットの回転変形を拘束する為に起きる現象ですが、ボルトが緩みにくいというのとは直接関係がありませんので、念のために注意致します。

ナットが回転するように変形

一覧へ戻る