ボルトエンジニア(株)

工学講座 ボルト・ナット締結の知識

質問7

トルク法で締め付ける場合のポイントは?

回答

 トルク法は、ねじの斜面を利用して、ナットやボルト頭部にトルクを与えることによって、ボルトに目標軸力を発生させます。ボルトの呼び径をdとすると、目標軸力 Fbを得るために必要なトルク Ttは次式で計算できます。

ボルトの目標軸力を得るために必要なトルクの計算式

ここでKは “トルク係数”と呼ばれており、上に示したようにねじ面の摩擦係数 µthとナット座面の摩擦係数 µnuによって変化します。よく知られたK=0.2という値は、並目ねじにおいて摩擦係数を0.15と仮定した時の数値です。
 ナットに与えられたトルクは、ねじ面の摩擦、ナット座面の摩擦、ねじ面を登るために使用されます。これらは、それぞれトルク係数Kの式の第1項、第2項、第3項に対応しています。すなわち、与えたトルクのうち、40%がねじ面の摩擦、50%がナット座面の摩擦で使われ、わずか10%だけがねじ面を登って軸力に変換されるということは、上記のKの式から説明できます。

 トルク-軸力関係式に関連して、トルク法の特徴をまとめると
【 1 】 同じトルク Ttで締め付けても、面の状態、使用する潤滑剤が変わると摩擦係数 µth、µnuが変わるため、結果として軸力 Fbが大きく変化することがある。
(例):
ケース1 並目ねじ、摩擦係数0.12(潤滑剤:マシン油等)の場合K=0.164
ケース2 並目ねじ、摩擦係数0.08(潤滑剤:二硫化モリブデン等)の場合K=0.115
したがって、ケース1で発生する軸力はケース2の約70%となる。

【 2 】 手作業で締め付ける場合、作業者が変わると、たとえ同じトルクTtで締め付けてもある程度軸力 Fbが変化することは避けられない。
理由:締め付け速度や面のあたり方が変わるので摩擦係数の値が変化し、それに対応してトルク係数 Kが変化する。

【 3 】 同じ締結部を同じトルクで締め付ける場合でも、一度開放して再度締め付けると、面の状態が変わるため、程度の差はあるがボルト軸力は変化する。
(例):
並目ねじで初期締め付け時の摩擦係数が0.1、再締め付け時の摩擦係数が0.2(やや極端な数値です)の時、Kは0.140から0.260に変化するので、0.140/0.260=0.54より、軸力は約54%に低下してしまいます。

【 4 】 上記の【1】~【3】をまとめると、トルク係数 Kは摩擦係数 µth、µnuにほぼ比例するので、 「同じトルクを与えた時に発生する軸力は摩擦係数にほぼ反比例する」 といえます。

【 5 】 接触面に塗布する潤滑剤には、摩擦係数が小さいこと(小さなトルクで大きな軸力が発生できる)および摩擦係数のばらつきが小さいことが望まれます。
(例):
ケース1 摩擦係数=0.15±0.015(軸力が±10%程度のばらつく可能性あり)
ケース2 摩擦係数=0.08±0.015(軸力が±19%程度のばらつく可能性あり)
目標軸力が同じ場合、ケース2の方が小さなトルクで締め付け可能 しかし、摩擦係数のばらつきが大きいので、軸力のばらつきも大きくなるので注意が必要。

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